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【書評】「これからの世界をつくる仲間たちへ」(落合陽一)のレビュー

これからの世界をつくる仲間たちへ

読むだけでワクワクする落合先生の本第二弾。

評価:★★★★★(5/5)

 

学びと感想

好きなことややりたいことに価値があるのかを的確に見極めるために、文脈の中での位置づけを逐一明確化する必要があり、そのための思考体力をつけることの重要性を学ぶことができた。

そしてインプットした知識を自分なりのオリジナルなストーリーに仕立て上げる解釈力こそが思考の基礎であり、世界で自分だけの価値を持つための最重要事項だと本書を読んで認識した。

いかに人と違ったことを考えるか、というよりも他人と比べず想像力に限界を設けないことこそが思考体力を鍛え、今後の時代における価値ある人間になるために必要なのかもしれない。

そのドライビングフォースが好奇心であり、要するにワクワクするかどうかだと個人的には思う。

 

引用

p.19
僕は、コンピュータが人間の社会にもたらす変化は、単に「昔より便利になった」とか「生活が楽になった」という次元のものではないと思っています。それはもっと根本的なレベルで、人間の生き方と考え方に変革を迫るはずです。つまり、コンピュータは電化製品ではなく、我々の第二の身体であり、脳であり、そして知的処理を行うもの、タンパク質の遺伝子を持たない集合型の隣人です。

 

p.29
大事なのは、算数を使って何をするかと言うこと。だからそれと同様に、プログラミングができるだけでは意味がない。それよりも重要なのは、やはり自分の考えをロジカルに説明して、ロジカルにシステムを作る能力です。

 

p.33
たくさんの違った常識を持つこと。複数のオピニオンリーダーの考え方を並列に持ちながら、自分の人生と比較し、どれとも違った結論に着地できないか、常に考えること、そういう頭脳の体力が大切です。

 

p.38
コンピュータに負けないために持つべきなのは、根性やガッツではありません。コンピュータになくて人間にあるのは、「モチベーション」です。

 

p.58
そのためこれからは、人間が「人工知能のインターフェイス」として働くことが多くなるでしょう。必要な情報は人工知能に与えてもらい、それを顧客に伝えるインターフェイスの部分だけを人間が担当するのです。

 

p.62
やはり、ホワイトカラーがやっているマネジメント業務はコンピュータに取って代わられ、その分、運転手のようなブルーカラーの収入は増えるわけです。

 

p.66
もし「維持コストのかからない管理職」がいれば、労働者に富を平等に分配できるはずです。しかし実際には、マネジメントできるほどのコンピュータが存在せず、「管理職」としての共産党や役人を食べさせなければいけなかった。そこが富を搾取するから、労働者は豊かになれなかったわけです。
そう考えると、先ほど紹介したUberなどは、ブルーカラーの平等と豊かさを実現するものとも言えます。配車というマネジメント業務を、電気代だけで動いてくれるコンピュータに集約することで、それが成立するのです。
コンピュータの発達によってこうした方式が広まれば、今までマネジメントと言う中間的な位置で食べていた人たちの仕事は必要ありません。

 

p.75
大事なのは、自分の能力を活かすために資本家組織が必要かどうかと言うこと。大企業を選ぶかどうかは、それを見極めた上で判断しなければいけません。

 

p.77
例えば米国の社会学者リチャード・フロリダは、それとは別に「クリエイティブ・クラス」と言う新しい階層が存在すると考えました。
簡単に言えば、これは「創造的専門性を持った知的労働者」のことです。現在の資本主義社会では、このクリエイティブ・クラスがホワイトカラーの上位に位置している。彼らには「知的な独占的リソース」があるので、株式や石油などの物理的な資本を持っていなくても、資本主義社会で大きな成功を収めることができるのです。

 

p.80
しかし大事なのは、成功したクリエイティブ・クラスをそのまま目標にすることではなく、その人が「なぜ、今の時代に価値を持っているのか」を考えることです。
それを考えれば、「誰かみたいになる」ことにたいした価値がないことがわかるはず。その「誰か」にだけ価値があるのですから、別のオリジナリティを持った「何者か」を目指すしかありません。「誰か」を目指すのではなく、自分自身の価値を信じられること。自分で自分を肯定して己の価値基準を持つことが大切です。

 

p.82
しかし、クリエイティブ・クラスの人間が解決する問題は、他人から与えられるものではありません。彼らの仕事は、まず誰も気づかなかった問題がそこにあることを発見するところから始まります。

でも山中教授は、自ら「こんな細胞があれば多くの患者の治療に役立てられる」という問題を考えだし、自分でそれを解決しました。真にクリエイティブな仕事とは、そういうものです。
そのような仕事は、勉強からは生まれません。勉強は基本的に、誰かが見つけて解決した問題を追体験するようなものです。

 

p.83
教科書を読んで勉強するのがホワイトカラーで、自分で教科書をかける位の専門性を持っているのがクリエイティブ・クラスだと言ってもいいでしょう。

 

p.86
そのため、コンピュータの存在が大きくなればなるほど、抽象志向だけのリベラルアーツは力を持ちにくい。メカニカルアーツとつながるリベラルアーツは価値を持ちますが、メカニカルアーツなしのリベラルアーツは経済市場においてほとんど意味がなくなります。

 

p.97
例えば、今は交通系のICカードでどの会社の路線にも乗車できるし、コンビニで買い物もできます。あのチップに何が入っているのか、ほとんどの人は説明できません。また外見上も区別がつきません。例えば、機械時計なら分解すれば、歯車の並びが力を伝えあって動いているのがわかるでしょう。しかし、我々には電気はもちろん見えませんし、ICの中にどんなプログラムが書き込まれているかは見ることができません。チップの動作はそれをプログラムした人の意向でいかようにも変化します。そうしたブラックボックス化があちらこちらで起こっているのです。

 

p.98
それに対して、現代の「魔術」は誰かが必ずその中身を知っています。「誰も理由がわからないのにうまくいく」と言う事は、一部の現象論的に記述された工学や、一部の人工知能アルゴリズム等の例外を除いて滅多にありません。魔術の裏側には必ず「魔術師」や「魔法使い」がいる。それこそが、暗黙知を持つクリエイティブ・クラスなのです。暗黙知を持つクリエイティブ・クラスにとって人工知能環境は、自らの欠点や他人で代替可能なタスクを行ってくれる第二の頭脳であり、身体です。彼らには人工知能は自らの存在を脅かす敵ではなく、自分のことをよく知っている「親友」となるはずです。

 

p.101
前章で述べたとおり、今の資本主義社会は物理的リソースではなく「人間」が最大の資本ですから、シェアできない暗黙知の持ち主が大勢いる会社が強い。専門性を絞ったからといって、将来の進路まで絞ることにはなりません。繰り返しますが、専門性が低く、何でも器用に処理できる浅く広い人材の方が、これからは人材としての価値を評価されにくいのです。

 

p.102
「オンリーワン」がそのまま「ナンバーワン」になれる可能性があるのです。
ただし、その「オンリーワン」が今の時代に何の価値があるのかを説明するロジックは用意しなければいけません。

 

p.108
そのためのサーベイ(事前調査)は、進路を決める上で極めて重要です。親や教師から「好きなことを見つけなさい」とか「やりたいことを探しなさい」と言われても、それだけでは漠然としすぎていて、どうしたらいいかわからないでしょう。「好きなこと」「やりたいこと」に価値があるのかどうかもよくわかりません。
それについて僕がよく学生たちに言うのは、「その新しい価値が今の世界にある価値を変えていく理由に、文脈がつくか」「それに対してどれくらい造詣が深いか」が大切だということです。
何やら難しい話のように聞こえるかもしれませんが、そんな事はありません。ここで言う「文脈」とはオリジナリティーの説明のことで、概ね次の5つの問いに落とし込みことができます。

・それによって誰が幸せになるのか。
・なぜ今、その問題なのか。なぜ先人たちはそれができなかったのか。
・過去の何を受け継いでそのアイディアに到達したのか。
・どこに行けばそれができるのか。
・実現のためのスキルは他の人が到達しにくいものなのか。

この5つにまともに答えられれば、そのテーマには価値があります。これを説明できると言う事は文脈で語れる=有用性を言語化できると言うことであり、他人にも共有可能な価値になる可能性があります。

 

p.128
コンピュータがあらゆることを記述していく、人は精神や心を持つ特別な存在ではなく、身体を持つコンピュータとして受け入れられていくことによって、今までの自然観(いわばデカルト的自然観)が崩れていく。唯一の知的生命としての人間が世界を解き明かしていくような世界観から、物質、精神、身体、波動、あらゆるものをコンピュータの視座で統一的に記述していくような計算機的自然観がデジタル・ネイチャーです。
そういう「自然環境」の中で、何かの価値を作り続けていく知的生産する側でいたければ、何とかしてコンピュータのもたらすプラットフォームから自らを差別化する手段を考える必要があります。

 

p.132
プラットフォームを形成するものは、コンピュータと結びついたコスト合理性とコモディティー化の波です。

 

p.134
コンピュータの使い方を覚えるのではなく、「コンピュータとは何か」「プラットフォームとは何か」を考え、自分が何を解決するか、プラットフォームの外側に出る方法を考えに考えて考えることが大切です。その「思考体力」を持つことが若い世代にとって重要になるでしょう。

 

p.137
思考体力の基本は「解釈力」です。知識を他の知識とひたすら結びつけておくこと。
したがって大事なのは、検索で知った答えを自分なりに解釈して、そこに書かれていない深いストーリーを語ることができるかどうか。自分の生きてきた人生とその答えはどうやって接続されていくのか。それを考えることで思考が深まり、形式知が暗黙知になっていくのです。
そういう能力は、考えたことの意味を「言葉や実装で説明する」努力をすることで養われます。

つまり、常に自分の仕事と関連させたらどんなことができるのかと言う観点で聞けば、じゃあ具体的にどうしようとか、もう少し突っ込んだ話が聞きたいとか質問が出てきます。

 

p.149
これからの時代、コミニケーションで大事なのは、語学的な正しさではなく、「ロジックの正しさ」です。

 

p.151
自分が発見した世界の問題を解決するためにコミニケーション能力が必要なのは、「世界は人間が回している」からです。

 

p.153
ところが世界が「システム」だと思い込んでいる人は、それは人間のせいだとは考えません。うまく稼働すれば「システムの優秀さ」、うまく稼働しなければ「システムの不都合や故障」のようなものと受け止めている人は多いはずです。そしてひいては自分も社会の主体であるにもかかわらず、「社会のせい」にしていってしまいます。

 

p.161
ここで大事なのは、自分にとっての幸せが何なのかをしっかり考えておくこと。なぜなら、今の時代は、SNSなどを通じて他人の生活が可視化されやすいからです。

だから、自分にとっての「幸福」が何なのかが曖昧だと、つい他人の幸福に目を奪われてしまい、「こいつらと比べて自分はなんて不幸なんだ」と嫉妬しているだけの状態になりかねません。そうやって不満やみじめさを心の中に溜め込んでいる人が今の時代には大勢います。

 

p.162
特にこれからの世界で考えなければいけないのは、「お金」と「時間」のどちらを大事にするかと言う問題でしょう。
なぜなら、今後の世界を支配するコンピュータにとって、「時間」は極めて重要な概念だからです。
コンピュータが演算をする際、コストを決めるのは「仕事」÷「処理速度」=「かかる時間」の1点だけです。ある結果を出すのに、どれぐらいの処理時間を要するかが問われます。それが今の「未来への距離」です。
世界のコンピュータ化が進めば、人間もそれと同じこと。時間が貨幣と同じような価値を持つことになるでしょう。
だとすると、人生を変える際には大きく分けて2つの基本方針があります。「時間を売り切りしてお金を稼ぐ」のか。それとも、「自由に使える時間を手に入れる」のか。

 

p.164
ワークライフバランスが問題になるのは、「好きなこと」「やりたいこと」を仕事にしていないからです。解決したい問題がある人間、僕だったら研究ですが、そういう人が、できることなら1日24時間、1年365日後それに費やしたい。だから僕は、時間を売り切りしてお金を稼ぐのではなく、自由な時間をより多く得られる仕事を選んでいるわけです。ワークライフバランスなんて考えたこともないし、その街の事態が僕には必要ありません。

 

p.166
あなたがこの本を買った事は、もちろん投資です。本の場合、残る価値は「中古品として売れる」ことだけではありません(この本は売らずに何ども読んでほしいけど)。それよりも、自分の頭の中に残る情報の価値が大きい。読んだ自分自身の価値が上がるのです。その分、中古品としての価値がどんどん減っていくものより、投資価値は高いと言えるでしょう。大学の授業料など、教育的な観点のあるものも消費ではなく、投資に他なりません。
では、時間を売り切りしたお金で余暇を楽しむのは、どちらなのか。基本的には「消費」行動でしょう。そこで消費されるのは、お金だけではありません。余暇として使った時間も消費されています。
一方、ワークとライフを区別せず、自分のやりたいことに時間を使う生き方には、「消費」がほとんどありません。全ては自分の能力を高め、問題を解決するための「投資」なのです。
研究する、論文を書く、本を書く、そのために勉強したりデータを取ったりする。それらは全て「投資」となっていくのです。

 

p.172
したがって、これからの若い世代が考えなければいけないのは、「年収1000万円の会社に入ること(入って安心すること)」ではなく、「年収1000万円の価値がある人間になること」でしょう。

 

p.174
どんな職業でも、人の市場価値はそうやって年代ごとに上下します。だから自分の幸福感や経済感覚を考えるときは、年代別の「価値曲線」を引いてみることが大事。例えば若くてキャピキャピしていることでみんなに可愛がられているOLなら、市場価値が最大化するのは30歳位かもしれません。それ以降は、もう上がらない。ホワイトカラーの会社員なら、40代で市場価値が最大化するでしょう。50代以降はほとんどが会社にぶら下がっているだけなので、価値が下降していきます。
このように、自分の将来をイメージするときは、市場価値の「最高到達点」がどこにあるのかを考えておくべきです。

 

p.178
重要なのは、「言語化する能力」「論理力」「思考体力」「世界70億人を相手にすること」「経済感覚」「世界は人間が回していると言う意識」、そして「専門性」です。これらの武器を身に付ければ、「自分」と言う個人に価値が生まれるので、どこでも活躍の場を見つけることができます。
何より「専門性」は重要です。小さな事でもいいから、「自分にしかできないこと」は、その人材を欲するに十分な理由だからです。専門性を高めていけば、「魔法を使う側」になることができるはずです。

 

p.180
一般的に、「秀才」と言う言葉には、まんべんなく勉強ができる優等生と言うイメージがあります。そこには「専門性」がない。学んだことを利用して何でもこなせるジェネラリストが「秀才」です。
それに対して、「天才」は何か1つのことに対してスペシャルな才能を持っています。「何でもこなせる天才」はほとんどいません。また、「天才」ということによって説明を省略する癖が日本のメディアがあるように思います。

 

p.182
ちなみに、クリエイティブ・クラスには専門性が不可欠ですが、そのレンジが狭すぎると失敗の確率が高まります。だから、レンジをある程度広く取った「変態性」が重要です。

 

p.183
天才肌の人は得意なものが限られているので、その才能を生かす職種が最初から1つに限定されてしまうケースが多いでしょう。
しかし僕の言う「変態」は比較的レンジの広い専門性を持っているので、選べる職種も広い。

 

p.203
まさにそのタイトル通り、既成概念を打破するには「素人」と「玄人」の両面が求められると言えるでしょう。

一方、「玄人のように考えて、玄人のように実行する」の場合は、確実に何かを実現できるでしょうが、そこで解決されるのはかなりマニアックな問題になるでしょう。素人には全く見えない、その分野のエッジにある問題が解決されるだけです。狭い範囲でのマイナーチェンジはできますが、この世界を変えるほどのインパクトはありません。人の心を動かし、世界を変えようと思ったら、玄人にしかわからないものを作っていてはダメ。それは狭い範囲のカルチャーとしては生き延びることができますが、世界を変えることはできないでしょう。世界を変えるのは、もともと興味も関心もなかった人々の心を強烈にノックしてドアを開けさせるものやサービスです。そして、いちばん留意しないといけないのは、素人の心を失わないままに玄人になることです。それを考えながらキャリアを進めていく必要があると思います。

 

p.205
玄人が高度な技術や深い思想に基づいてクオリティの高いものを作っても、そこに素人も含めた万人共通の「wow!」がなければいけません。この「wow!」にもいくつか種類があって、1番簡単なのは「きれい」「美しい」と思わせるものを作ること。その次に簡単なのは、「ヤバい」「すげえ」と思わせることでしょう。
それよりも難しいのは、「楽しい」と思わせること。この感覚には文化祭があることも多いので、ある場所でウケたものが別の場所でもウケるとは限りません。

その「楽しい」よりもっと難しいのが、「なんだかジーンとした」という感動です。これは最も言語化しにくい「wow!」ですが、場合によってはその人の人生を変えてしまうほどのインパクトがある。

したがって、これからは「チームワーク」も重要になるでしょう。1人の人物が「素人のように考え、玄人のように実行する」のは限界があるからです。それを克服するには、チームを組んで勉強した方が良い。メンバーの誰かが素人のように考えて見つけたテーマを、専門性を持つ仲間が実行していくわけです。

 

p.208
でも、これからの世界は1人の天才では変えられません。何人もの「変態」が、お互いの専門性を掛け合わせることによって、世界規模の「wow!」を生み出す時代です。例えばパーマーはヘッドマウントディスプレーや古いゲーム機を収集するのが好きなギークだったように、猛烈に好きなことがある奴が集まると何か大きな化学変化が起きる。それを人はイノベーションと呼ぶのかもしれません。

 

p.214
自分の価値=オリジナリティと専門性を活かして、これまで人類が誰も到達できなかった地点に立つ。それが、僕の生きる意味でありかただと思っています。

 

これからの世界をつくる仲間たちへ

これからの世界をつくる仲間たちへ

 
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