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【書評】「超AI時代の生存戦略」(落合陽一)のレビュー

超AI時代の生存戦略

これからの時代において楽しく価値ある生き方をする上で必須の、落合陽一先生の本。

評価:★★★★☆(4/5)

 

学びと感想

NewsPicksの動画などもちょくちょく見て勉強しているが、本書でも落合節が炸裂している。

すでに「べき論」で語る時代ではないことを再認識した。自分の周りに「べき論」で語る人間がいかに多いことか。そしてそれらの人の意見に納得ができない理由がわかった。

マーケットを新しく作り、他人のできない分野で一人ひとりが価値を出すことの重要性を学んだ。自分は何者でもなく、何者にもなれないのだから、自分という存在を極めていくしかないのだ。

ワークアズライフという生き方を体現するにあたり、ギャンブル的、コレクション的、快感的という指標が重要になってくると落合先生は説いているが、つまるところ自分が何に一番興奮するのかを突き詰めていくことがオリジナルな専門性に繋がると感じた。

今後の生き方を創造する上で良きツールとなる本であった。

 

引用

p.26
AIで自動化できる仕事をその地位に就いている人間から奪い、そこでできた余剰の資本を人機一体によりさらにクリエイティブを加速させ、他のコンピュータ親和性の高い専門家に注入して、より大きな問題を解決していこうとしている。

 

p.31
今の社会において、雇用され、労働し、対価をもらうと言うスタイルから、好きなことで価値を生み出すスタイルに転換することの方が重要だ。それは余暇をエンタメで潰すと言う意味でなく、ライフにおいても戦略を定め、差別化した人生価値を用いて利潤を集めていくと言うことである。

 

p.33
「ワークとライフ」の対比で捉えるのではなく、「報酬とストレス」と言う捉え方の方が今の働き方を象徴している。働く時間、休み時間と言う捉え方より、ストレスのかかることとかからないことのバランスの方が重要だ。

 

p.37
そういうような議論がある中で、人間性の定義と言うのは現在進行形で変わっており、これからも変わってくるはずだ。昨今の機械学習法の1つディープラーニングの発展とともに人間のように思考する知性は生まれつつある。

 

p.39
というのも、一人一人が責任感を感じられるレベルは、大体30人ぐらいが限度と言われている。ベンチャー企業やコミュニティ運営を見ているとまさしくそうで、それ以上大きくなると、責任の所在がわからなくなって、意思決定がしにくくなってくる。

 

p.41
そのような時代と言う観点では、世の中のグローバル経営者やトップランナーは時代を読み続けているのであるが、「時代の中で自分らしい」ということを目指せれば、グローバルの自分らしい人間に、そうでなければ、コミュニティ選びの方が重要になるだろう。その決断に優劣はない。

 

p.44
例えば、研究でもそうだが、全員が全員、違う方向に向かってやっていることに広い視点で意味がある。音楽業界でも、ミュージシャンそれぞれが何かで1位をとっていれば、全員が違う方向を向いて全体の多様性が担保されていくわけだ。
それらは、特定の一個のパイを奪い合うのではなく、パイをどうやって広げようか、と言う超AI時代の人間全体の生存戦略だ。

 

p.45
今まで言われてきた、「自分が自分の道を行く」と言うのは、競争の上でどういうキャラクターをつけていくかと言う話だった。
しかし今、その意味では全くなく、これからやらないといけない事は、全員が全員、違う方向に向かってやっていくことを当たり前に思うということだ。つまり、誰も他人の道について気にかけていない、そして自分も気にしていないと言うマインドセットだ。
今、この世界で他人と違うのは当たり前で、他人と違うことをしているから価値がある。もし、他人と競争をしているならば、それはレッドオーシャンにいるということだ。つまり、競争心を持つというのは、レッドオーシャンの考え方で、そうではなくて一人一人がブルーオーシャンの考え方をしなくてはいけない。

 

p.49
そのように、ワークアズライフの時代には、責任と戦略の取り方が1人の中でモザイク状になるというか、ある一部に注力して他はプラットフォームに任せて合理化していく時代になってきている。

 

p.51
すべての生活スタイルに置いて私たちの人間性を許容し、人間とはこうあるべきと言う「べき論」で語らないことが、超AI時代においては重要なことだと思う。

 

p.53
そういう時代に、私たちがどんな信仰心を今までと違って持たないといけないのだろうか。「〇〇と言う価値は自分にとってどういう意味があるんだろう?」や、「入ってくる情報は、自分の価値基準に照らし合わせたら、どういう意味なんだろう?」と言うことを全員が全員、別々に考えなければいけないわけだ。
その時に、自分にとっての価値基準や絶対的なもの=信仰がないと、自分の指針が取れない状態になってしまう。それは、どのように価値を決定していいかが判断できないからだ。

 

p.58
しかし、仕事になる趣味を作ると言うことがワークアズライフの生存戦略では重要なので、「仕事になる趣味を3つくらい持ちましょう」と勧めたい。

 

p.62
一度、自分の仕事の中で、「どこがギャンブル的なのか」と言うことを意識してみるのを進めたい。これはストレスと報酬関係を明記するということだ。

 

p.69
以上のように、あなたが何の報酬で喜ぶのかということを意識して、「遊び」として人生をデザインしていくことが、これからの時代のキーワードになるだろう。そしてこれは、どれが正解と言うことではなく、人それぞれ違っている。どれか1つに限定するのではなく、すべての要素が混ざっているパターンもいいだろう。
僕の場合であれば、研究をするということが好きな理由が3つある。評価が得られる、でギャンブル的と言うことと、作品が残ると言う点でコレクション的と言うことだ。また、成果自体が見える時は自分の五感の新たな体験として感じることができて快感的でもあるので、実は3つが適度に合わさっていると言える。
そして逆に考えれば、あなたのやっていることに継続性がないのであれば、この3つの要素がどれか欠落しているのではないだろうか。

 

p.72
自分がやっていることで何が残っていくのか、それを意識してほしい。

 

p.76
「これが受け入れられるには、どのようなコンテクストがあるのか?」や、「今、自分はどういう時代背景を生きているのか?」と考えることである。

 

p.85
「〇〇と言う出口があるから、出口をベースに入り口を考える」と言う思考が当然になってくるだろう。出口に繋ぐ能力は、インターネットがもたらしてくれ、その中間のコミニケーション能力と言うのも、インターネットによって強くなっていく。そうすると、プロダクトを作る入り口の時から、出口のことを考えながら進めるということが当たり前になっていてそれがすごく重要になってくる。
それを今の世の中では、「マーケティング能力」と呼んでいて、市場が何を必要としているかを人間が考えるわけだ。市場は何をしているかと言うと、需要を持っている。その需要に対して供給を与える能力だ。

 

p.87
顧客にとって、どういう利便性があるのかということを開発の段階から考える方が、作ってしまったものを得るより効率的だし、シンギュラリティ以降は必然的に開発自体とマーケティングは同義になってくる。

 

p.109
あと、論文と会議でのプレゼンを合わせて「学会発表」は行われるのだが、という事は論文もプレゼンの1種と言うことだ。そういうすると、プレゼンテーションとしての論文を考えたときに、「じゃあ、そのプレゼンで言いやすいものを作ろう」、もしくは、「言いやすいようにこの実験をしよう」と言うように組み立てる癖がつく。
つまり、プレゼンベースで仕事をすると、非常に仕事の効率が上がる。情報伝達のための仕事設計になるので、非常に効率的で重要なことだ。まず、プレゼンすることを先に考えて、スカスカのプレゼン資料を作ってから仕事を始める、と言う進め方は非常におすすめである。スカスカのプレゼン資料をどう埋めたらいいか、と言う順番でプレゼンベースに仕事をしたほうがはかどるだろう。

 

p.130
私たちも深層学習のようなもので動いているわけだから、おそらく人間が持っている能力のうちで重要なものは抽象化して特徴量の差を捉える能力なのだろう。抽象的なものとしてそのあらゆるジャンルの特徴量を持っていると、想像力の引き出し方が非常に充実するだろう。

 

p.150
それに対して、遺伝子レベルで好きそうでないもの、例えばサラダは、ビタミンは取りたくなるだろうが、遺伝子レベルではきっと中くらいのレベルだと思う。なので、このギャップを承知した上で、ラーメンを週一で食べるようにすると言う判断は凄く良い習慣だと思う。「今、自分は遺伝子レベルでこれを食べたいんだ」と言うように。

 

p.154
また、化粧品がコンプレックスビジネスと最初に述べたが、実は美人の顔は平均顔が多い。つまり、人間の顔を平均化していくと、美人になっていくのだ。
と言う事は、美しい顔は平均値なので、「平均値を意識することがない社会になっていく」のだから、それを気にする必要もなくなってくるということだ。Facebookなどを見ていて、美人の女性とイケメンの男性が結婚して子供ができると、すごく普通の子が生まれるなと思うことがあったが、きっとそういうことなのだろう。

 

超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト

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