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【書評】「「大発見」の思考法 iPS細胞 vs. 素粒子」(山中伸弥 益川敏英)のレビュー

「大発見」の思考法 iPS細胞 vs. 素粒子 (文春新書)

ノーベル賞研究者の益川先生と山中先生の対談本。

評価:★★★★★(5/5)

 

学びと感想

山中先生の本は以前も読んだことがあったが、益川先生の本は読んだことがなかった。

そのため、益川先生の発言からの学びが多かった。

世の中が便利になるに連れて物事はブラックボックス化している。そのため、本質を理解することが重要であるという至極真っ当な意見に共感した。

また、サイエンス界の世界的権威の二人が日本社会やキャリアに関する常識や固定観念に対して疑問点を持っていることからも、日本の研究者の未来はそんなに悪くないのではと少し感じた。

前例にとらわれても仕方がないので、回旋型の人生を送っていきたい。

研究者としての姿勢や信念に関しては感心するばかりで、何も異論なくすっと頭に入ってきた。厳しい世界だが、研究の道も良いなと思う一冊であった。

 

引用

p.28
その意味で、科学者っていうのは前向きなんだよね。とりあえず、できる範囲のことから手をつけていこうとする。そうしなければ、何も始まらない。

 

p.56
今のテレビは、外側のことはわかるけれど、中にどんな装置が入っていて、どういうしくみで動くのか、ほとんどの人にはわからない。ブラックボックス化しているわけです。皮肉なことに、科学が発展すればするほど、科学的な事柄が人々の生活きら乖離していく、よそよそしくなっていくんですね。僕はこのことを「科学疎外」と呼んでいるんだけど。

 

p.59
そう、科学の基本は国語ですよ。何にしてもすべて文章の言葉から入ってくる。呼んでその世界が頭に思い浮かべられるかどうか。その力があれば、理解していける。そのあとは、吸収した知識を頭の中で思い描いて発展させていけるかどうか。

 

p.73
だって、憧れを見つけなければ何も始まらないもの。憧れがたくさんあるからフラフラするわけでしょう。そして憧れを見つけたら、ドン・キホーテのように一歩を踏み出すことが大事。じっとしていてもロマンは絶対にやってこない。迷ったり、壁にぶつかったりしながらも、実際に動き出してしまえば憧れはロマンに変わる。僕はそう信じているんです。

 

p.79
日本人は直線型思考の民族で、よほどのことがない限り、いったん入った会社は辞めないし、奥さんを途中で替えたりもしない。それと違うことをすると、「人生の落伍者」のように思われ、自分でもそう思ってしまいます。
ところが、アメリカで暮らしてみると、回旋型の人生を送っている人がたくさんいます。

 

p.80
直線型の日本の場合は、たった一度のつまずきによって、人生が大きく変わってしまうんじゃないかな。そこで挫折感を感じてよそに行ったら、それだけで自分が人生の落伍者のように感じてしまう。

 

p.81
学生時代は六法全書を持ち歩いていたときもあったし(笑)。でも、「これを物理の研究に役立ててやろう」なんて思ったことは一度もない。そんなさもしいことは考えません。いつも僕は目の前にある面白いことで遊んでいるだけなんです。

 

p.89
受身で動くのではなく、自分自身で「問い」を立てる力がこれからますます必要になってくるのではないでしょうか。

 

p.90
僕はノーベル賞を受賞してから、いろんなところで「科学を勉強する原動力はなんですか?」と訊かれるたびに、「それは憧れである」と答えてきました。若者は、読書などで科学界の偉人に憧れる。そして、自分も近づきたい、自分の知らない世界を知りたい、本に書いてあるその先を知りたい、と感受性を刺激されることによって、若者は科学に近づいていくんだと思う。

 

p.99
実験の結果が予想通りだったら、それは基本的に「並」の結果なんです。自分が予想していないことが起こったほうが、科学者としては当然、面白い。そこで大事なのは、「この予想外の結果は、いったい何なのだろう」と考えることです。そこから全てが始まる。ガッカリ落ち込んでいたらそこでおしまい。何も生まれない。

 

p.162
「眼高手低」この言葉は本来、「評論はうまいけれど実作はヘタだ」という意味なんだけど、学生時代にある数学の先生が、「科学者として目標は高く置きなさい。しかし、着実にできることから一つ一つ積み上げていきなさい」と解釈されていたんです。

 

p.164
「vision & hard work」、つまり、「明確なビジョンを持ち、それに向かって一生懸命に努力すること」が、研究者として成功するための条件だというのです。

 

p.191
科学者にとって、「神」の英語訳は「ゴッド」じゃなくて、「ネイチャー」なんですね。

 

「大発見」の思考法 (文春新書)

「大発見」の思考法 (文春新書)

 
「大発見」の思考法 iPS細胞 vs. 素粒子 (文春新書)

「大発見」の思考法 iPS細胞 vs. 素粒子 (文春新書)