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【書評】「ブロックチェーン・レボリューション」(ドン・タプスコット/アレックス・タプスコット)のレビュー

ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

ブロックチェーンの仕組みと魅力を学べる本。

評価:★★★★☆(4/5)

 

学びと感想

ビットコインが用いている技術としても有名なブロックチェーンの本。

ブロックチェーンのアドバンテージと言えば、非中央集権化による安全性と自由化だ。本書ではブロックチェーンの魅力について、具体的な例を用いてたっぷりと学ぶことができる。

実際ブロックチェーン技術はこの社会に根ざすのだろうか。僕の考えでは、向こう数年から数十年では不可能だと思う。これから生まれてくるブロックチェーンネイティブが社会のイニシアチブを取るようになれば、ブロックチェーンもしくはそれ以上のシステムがスタンダードになるだろう。

非常に内容は濃いが、図が一切ないのでイメージしづらい部分があるかもしれない。

それ以外はかなりおすすめできる本である。

 

引用

p.5
暗号通貨が従来の追加と違うところは、発行にも管理にも国が関与しないと言う点だ。一連のルールに従った分散型コンピューティングによって、信頼された第三者を介することなく、端末間でやりとりされるデータに嘘がないことを保証する。

 

p.8
ブロックチェーンの主な特徴は、まず分散されていること。中心となるデータベースが存在しないので、乗っ取ろうとしても無駄だ。ブロックチェーンは世界中の参加者たちのコンピューターで動いているので、一台がダメになっても他でカバーできる。
もう一つ大事な特徴はパブリックであることを。ネットワーク上に置いてあるからいつでも誰でも自由に見られるし、データの正しさを検証できる。どこかの機関が大事に管理しているわけではないと言うことだ。
それにブロックチェーンには、暗号技術を利用したことがセキュリティーが備わっている。公開鍵と秘密鍵と言う2種類の鍵を利用して、自分の資産を確実に守ることが可能だ。ビットコインのブロックチェーンでは、取引データが個人情報と結びつかないので、大事な情報が盗まれたり流出したりする心配もない。

 

p.22
たいていの技術は末端の仕事を自動化しようとしますが、ブロックチェーンは中央の仕事を自動化します。タクシーの運転手の仕事を奪うのではなく、無駄をなくして運転手が直接仕事を取れるようにするんです。

 

p.39
マイナーはプルーフオブワークの仕事をして、ビットコインのブロックチェーンに新たなブロック(情報のかたまり)をせっせと追加していく。
マイナーたちは、ネットワーク上に流れてきた未処理データを集めて、新しいブロックの形に加工する。ただし、ロックを新しく作るためには、まず難しいパズルを解かなくてはならない。僕のは難しく、答えが合っているかを確かめるのは簡単なパズルだ。パズルが解けた人は答えをネットワークに送信し、参加者たちが答え合わせをして、答えが合っていれば公録として承認される。

 

p.44
現実的に考えて、ビットコインのネットワーク全体を出し抜く事は不可能では無いにしても、かなり難しい。世界中に数多くのマイナーが存在し、ネットワーク全体の処理能力が刻々と上がり続けているからだ。ネットワーク参加者が増えれば増えるほど、権力は広く分散され、不正をして支配権を握ることが難しくなる。

 

p.48
サトシ・ナカモトは、利己的な行動がネットワーク全体の利益になるようにビットコインを設計した。そこでは正しいことをするのが、1番自分の得になる。合意形成と報酬の仕組みがそのように作られているから、わざわざ不正をするメリットがどこにもないわけだ。

 

p.53
PKIの各ユーザは公開鍵と秘密鍵と言う2種類の鍵データをペアで持っている。公開鍵は誰でも見られるように公開するカギで、秘密鍵はパスワードのように自分だけしか知らない鍵だ。一方の鍵を暗号で、もう一方を復号に使用する。1つの秘密鍵で暗号化されたデータは、それに対応する公開鍵でしか復号できない。ビットコインではこのPKI生電子署名に利用して、なりすましや改ざんを防止している。誰かがあなたのお金を盗んだり、あなたになりすましてお金を使う事は、暗号学的に不可能なのだ。

 

p.112
コンセンシスでは、すべての従業員が経営方針の決定に参加している。ルービンは会社を車輪の「ハブ」に例える。中心となるハブから、いくつものプロジェクトが「スポーク」として広がっているイメージだ。

 

p.114
彼らが将来的に目指しているのは、人間によるマネジメントを完全に廃し、スマートコントラクトが全体を制御する自律分散型の組織だ。
そんなことが本当に可能なのだろうか?
「もちろん可能です」とルービンは言う。「グローバルな分散型ネットワークと言う基盤の上に巨大な知性が展開するんです。専門の部署を寄せ集めた大企業と言う構造は否応なく変わっていくでしょうし、人間ではなくソフトウェアが自由市場の中で協力・競争するようになるはずです」

 

p.116
ヒエラルキー型の組織がもてはやされたのも、そのためだ。上司は部下に命令し、部下はそれに従う。部下が忍耐強く従ってくれれば、調整コストは最小限に抑えられるし、契約違反でトラブルになる可能性も小さくなる。
単純作業なら、それが1番効率的だったかもしれない。しかし世の中は変化し、一人ひとりに創造的でイノベーティブな働き方が求められるようになった。

 

p.122
スマートコントラクトはブロックチェーン上の「契約」である。ただし、紙の契約書と違って、それ自体に強制力のある契約だ。あらかじめ日時は執行条件を設定しておけば、プログラムが勝手にそれを実行してくれる。
たとえば、「ある条件を満たすプログラムを変えたら100ドルを支払う」と言う契約があった場合、そのプログラムが動作テストを通過すると同時に100ドルがウォレットに振り込まれる。適当な仕事でごまかすことができないし、真面目に仕事をしたのにお金が振り込まれないという心配もない。
スマートコントラクトなら約束が守られるかどうかと言う心配はなくなるし、約束が破られた場合の訴訟コストも存在しない。安心してたような人たちとビジネスができるようになるだろう。

 

p.123
ブロックチェーンを活用すれば、管理職の仕事を最小限に減らすことができる。スマートコントラクトによる明確なタスク設定と報酬システムは、仕事の内容を透明化し、やるべき仕事の確実な成功を保証してくれる。管理職が見張って仕事をさせなくても、各自がプログラムのもとで主体的に成果を上げるようになるのだ。

 

p.131
ただし、部屋の提供者(ホスト)が十分な対価を得られているかどうかは疑問だ。予約が確定するたびに、ホストはAirBnBに対して数%の手数料を払わなくてはいけない。海外からの送金を受け取る場合、手数料もかなりの負担になる。また、部屋を貸す側も借りる側も、airbnbに個人情報を登録する必要がある。データベースが攻撃されたら一大事だ。
もっといいやり方がないだろうか。例えばブロックチェーンを利用して、分散型のairbnbを作ったらどうだろう?

bairbnbは一種の分散型アプリケーション(DApp)である。部屋情報はブロックチェーンで管理し、部屋の貸し借りは1連のスマートコントラクトで実行する。空き部屋の持ち主が部屋情報と写真を登録すると、旅行者たちは条件に合う部屋を簡単に検索できる。貸してと借り手の双方に評価システムがあるので、相手の評価を見てから取引するかどうかご判断することも可能だ。
従来のairbnbと違って、貸してと借り手は直接ネットワークでやり取りする。メッセージは暗号化された形で相手に送信され、airbnbのようにサーバーに保存される事は無い。この時に電話番号を教え合うこともできるので、そのままbairbnbを介さずに取引することも可能だが、bairbnbを使ったほうが都合の良い点がいくつかある。

 

p.137
①スマートコントラクト
スマートコントラクトは前述の通り、強制力を持った自動実行型の契約だ。決められた事は確実に実行され、意見の食い違いやトラブルの可能性を最小限に抑えられる。

約束が守られるかどうかと言う心配はなくなるし、約束が破られた場合の訴訟コストも存在しない。ビジネスの機会が大きく広がるだろう。ゆくゆくは弁護士の仕事がなくなってしまうかもしれない。

②オープンネットワーク型企業(ONE)
スマートコントラクトによって契約コストが削減されれば、多様で複雑な契約のネットワークを築くことが可能になる。
企業の内側と外側の区別は曖昧になり、どこの誰とでもシームレスな取引が実現できる。企業の境界は薄れ、ビジネスは今よりずっと流動的でフレキシブルなものになるはずだ。

③自律エージェント
この本では自分で周囲の環境読み取り、状況判断しながら仕事をするデバイスやソフトウェアを自律エージェントと呼びたい。自律エージェントは「インテリジェントな」ソフトウェアと呼ばれることもある。本物の知性を持っているわけではないけれど、単に決められたことをやるだけのプログラムとは本質的に異なるものだ。人間がいちいち指示しなくても、自律エージェントはその場に応じて適切な行動を取れる。

④自律分散型企業(DAE)
Blockchain技術と暗号通貨を基盤として多数の自立エージェントが手を結び、全く新たな企業体を形成していく。

 

p.180
ブロックチェーンを使った分散型IoTは、世の中の様々なレベルに革新を起こす可能性を秘めている。P2Pのネットワークを活用した新たなモデルは、次のように多くのメリットを与えてくれる。
・スピード(自動化された直接取引)
・コスト削減(仲介業者が存在しない)
・効率化と収益増加(余剰資源の再利用)
・処理能力の向上(ヒューマンエラーの余地をなくす)
・不正の防止(信頼を組み込んだプロトコル)
・システム信頼性向上(分散によるボトルネックの解消)
・消費エネルギー削減(ネットワーク運用エネルギー以上の大幅な効率化とフィードバックループ)
・プライバシー保護(各アプリケーションはブロックチェーンのプライバシールールに従う)
・インフィニット・データの収集と分析によるパターンの発見とオペレーション改善
・予測能力の向上(嵐、地震、病気、作物の収穫、消費行動など)

 

p.181
こうしたメリットの中核にあるのは、中心に企業や政府をおかない、完全に対等なネットワークだ。権限が分散されているので、もしも誰かが仲介役になって面倒な手続きを入れようとしても、今はそれを迂回して取引できる。

IBMはIoTに関するレポートの中で、ブロックチェーンIoTが引き起こす変化を「創造的破壊の5つのベクトル」として紹介している。リアルタイム検索と支払いによるモノの流動化、需要と供給の自動マッチング、リスク評価と信用のネットワーク化、システム利用の自動化、クラウドソーシングやオープンコラボレーションを活用したリアルタイムでパワフルな価値統合プロセス、と言う5つのベクトルが革命の推進力になってると説かれている。
要するにシンプルで効率的なマーケットが実現できるということだ。より広い資源へのアクセスが可能になり、低リスクで好条件の取引が可能になる。基本的なインフラさえ整えば、参入障壁は高くない(アプリを開発するだけで良い)。維持費用もそれほどかからない(いろいろな業者に手数料を払わなくていい)。送金手数料は劇的に下がり、誰でも銀行口座を持ったり融資を受けたりすることができる。マイクロペイメントで分単位での課金と決済も可能になる。
ブロックチェーンIoTは「分散型資本主義」を生み、再分配では無い富の「分散」を実現するだろう。ビジネスは企業の無法地帯ではなくなり、個人や企業や社会の価値が正しく評価されるマーケットが立ち現れる。

  

ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

 
ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

  • 作者: ドン・タプスコット,アレックス・タプスコット
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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